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2024.10.14

2024秋クレモナ出張レポート VOL.1

(Vol.1 クレモナムジカ訪問 Vol.2 ヴァイオリン工房訪問 Vol.3 トリエンナーレ・ストラディヴァリ製作コンクール展示会)

【Vol.1 クレモナムジカ訪問】

クレモナムジカは、毎年9月最終の金〜日曜日にクレモナ市郊外で開かれる楽器の見本市です。特にヴァイオリンの街クレモナらしく弦楽器の出展ブースが充実したヨーロッパ最大級の規模を誇ります。かつてはフランクフルトのメッセがその中心地でしたが、現在では中国・上海のメッセが世界最大となっており、クレモナの開催時期と2週間差ということもあって、クレモナの出展の後、上海の準備にも取り掛かる製作家や団体も多く、慌しくも商業活動が活発な季節といえます。

ヴィルトゥオーゾは主に出展ブースを満遍なく回り、製作家たちの楽器の見学や実際の注文、輸送時期の確認などを行います。以前は、ホテルも容易に取れないこの時期をずらし開催の前後に訪問日程を取って、ゆったりと各製作家工房を直接回ることで関係を図っていました。今でも、また今回も直接の工房訪問は製作家との基本的なコミュニケーションを図る上で最優先ではありますが、見本市を訪問するメリットもあり、逆にデメリットもあります。

デメリットとしては、会場が広すぎて全部回ろうにも相当な体力労力を費やすことです。ただ見学するだけでは単なる散歩、運動にすぎません。ここで何をするのか、誰に合うのか、目的を遂げるためにどうするか、何を探すかなど事前にシミュレーションしておかないと、会場・人・周囲の音響に呑まれ埋没する自己を味わうだけで終わってしまいます。私も若い頃はこのような場が苦手で会場で孤独感を感じたものです。会場が市内から離れているため、一般的にバスなどの移動も面倒な点の一つですが、私どもは幸いクレモナのオフィスのパートナーがいるため車移動をすることができ効率化を図れます。

メリットはやはりひとところで多くの製作家やメーカーに会うことができるということ。今回は出張中に40名以上の製作家と会う約束をしていましたので、個々に訪問できる人数は限られてしまいます。個人で出展ブースを持っていたり、製作家協会や、アソシエーションのブースで参加している製作家とは会場で会うことによって時間の効率化を図ることができました。また初めて見る製作家の作品も中にはあり、若手の中から良い作り手さんを探すというのも大切なところです。

私たちは長年のクレモナでの訪問活動で、たくさんの知り合いや仲間ができており、顔を出したり挨拶を交わしに訪問するだけでもアピールになることもメリットの一端なのかもしれません。さらに、オールドやモダンのヴァイオリン、チェロなどを展示していたり所有していたりするブースもあり、楽器の勉強のため様々なものを見せてもらうことができることも嬉しいところです。いつも正当な楽器をたくさん見ることで目を養うことができ、正しい楽器の判断をすることができると考えています。実際に探しているものがある場合には目的を持って吟味もしますが、単純に名品に巡り会えることは素晴らしいことです。

Ansaldo Poggi のチェロ これぞPoggi作という素晴らしい作品


最後に、ヨーロッパ各国、イタリアの他の都市から参加している取引先、製作家たちに会えるのもメリットですね。

さて、今回のクレモナムジカでの見学や契約によって近日入荷-すでに入荷済みのヴァイオリンです。

Danilo Fiorentini, Lorenzo Lo Prinzi, Davide Somenzi, Giulio Maisenti, Lapo Vettori,

Bruno Fulcini

今後も時期をずらして続々と新たな楽器が入荷してまいりますので、どうぞお楽しみください。また、新たにフレンチボウのラインナップを増やしましたこと、人気の松脂の流通経路の変更や楽器の材料の購入、修理用具の購入をいたしました。

さて、日本国内での見本市に代わるものはかつての東京弦楽器フェアでしたが、以前のような形での開催は今後望めず、時代は新たなステージに入りました。今年5月に弦楽器専門数社が共通のホールに出展した「ラ・フォル・ジュルネ東京2024」は、私たちの実績と反響によって、来年は世界からも出展者を募る「弦楽器専門」ホールでの開催が現実味を帯びてきました。東京弦楽器フェアに代わり世界中から来たいと思われる祭典を日本で開催できれば幸いです。

(代表取締役 杉田 直樹)