コロナも明け、昨年からまた定期的に年に数回のクレモナへの訪問を再開しております。この度も9月22〜24日に開催されたクレモナ・モンドムジカ(楽器フェスティバル/見本市)への訪問と合わせて、市内の懇意にしている工房をまわりました。
イタリアの現代作家の数は数百人にのぼりますが、彼らが互いに意見交換し、共にリスペクトし合い切磋琢磨しながら楽器を作り上げることこそが文化であると言えるでしょう。特に世界文化遺産に登録されるクレモナの製作技術は、その文化継承の担い手となる作家たちが凌ぎを削る環境の中にあります。人気の作家たちの楽器は何年も待つ場合がありますが、オーダー受諾をコンスタントに勝ち取れるかは、このような定期訪問によって彼らと信頼関係を築くことにかかっていると言っても過言ではないでしょう。幸い、私たちは長年にわたりそのような良好な関係を多くの製作者と持つことができており、時に優先的にオーダーを振り分けてもらい、日本の皆様にコンスタントに良い楽器を提供させていただくことができております。
今回のフライトは東京〜ミュンヘン〜ミラノ。ロシアの上空を飛べない状況で、アラスカ/北極ルートは東京〜ミュンヘンが約14時間というロングフライトです。1日目はミラノ/マルペンサ空港に泊まり、翌日に空港からミラノ中央駅を経てクレモナへ列車で入りました。
[クレモナ1日目]
○ Maurizio Riboni オーダーを入れ、ケースをハンドメイドで製作してもらっています。イタリアならではのハイセンスな高級感あるケースを長年にわたり注文して来ています。ヴィルトゥオーゾでは特にラインナップを持つというよりは、個別にお客様のご注文に応じてオーダーを入れさせていただいております。今回もお客様のケースが完了しましたので受け取りに行って参りました。
○ Carlson & Neumann イタリアのモダン楽器の鑑定及び鑑定書発行をお願いしています。今回も2つのヴァイオリンを持ち込みさせていただきました。ヴィルトゥオーゾでは、高級と言われるイタリア楽器の販売時には必ずオーソリティーによる鑑定書をお付けしています。また、お客様の楽器の鑑定書発行のお手伝いもさせていただいております。
○ Stefano Conia / Stefano Conia Jr.
○ Shuichi Takahashi / Kaori Fukuyama
初日のお昼は、Stefano Conia さんから事前にランチに誘われていましたので、お昼前に同敷地内のそれぞれの工房にお邪魔しました。クレモナでも最も古い工房に数えられるこの場所は、ヴァイオリンの街クレモナの雰囲気を最も感じるところであります。お昼にはGiorgio Scolari さん、サラサーテ発行人の佐瀬亨さん、ヴァイオリニストの柏木真樹さんも同席の賑やかな昼食となりました。
先日入荷した素晴らしいStefano Conia jr. さんのデル・ジェスモデルのヴァイオリンに魅了され、今回、また同様のモデルでオーダーを入れ材料も選定しました。
○ Borja Bernabeu ヴァイオリンのオーダーを確認。画像にあるヴァイオリンが出来次第、ヴィルトゥオーゾに入荷します。モデルはいつもながらのデル・ジェスモデルです。年明けには完成とのこと。
○ Damiano Catesi Bernabeuさんの隣へ工房をオープンした作家さんで、Bernabeuさんの紹介で初めてお会いしました。Davide Sora さんのお弟子さんということでとても綺麗な楽器を作られるなという印象です。次回、時間を取って訪問しようと思います。
○ Silvio Levaggi 次回は2025年にヴァイオリン入荷予定。周期は長くかかりますが、コンスタントにオーダーを取ってもらえるようになり、これが3作目となります。現在、連続でチェロを3作依頼されているそうで、製作スケジュールが大変そうでした。
○ Akira Takahashi 日本で最も人気の実力派日本人製作家、高橋明さん。先日、ヴィルトゥオーゾにヴァイオリンが入荷したばかりです。いつもあっという間にお客様のもとに行ってしまうのは全てのクオリティが高いことによります。画像の楽器は11月の関西での展示会用に完成したものらしいですが、このヴァイオリンも展示会後はヴィルトゥオーゾへ入荷予定です。
○ Emilio & Luca Slaviero 弓の製作家親子。11月には名古屋で大々的なコラボレーションの展示会を開催します。彼ら自身の作品と、膨大なフレンチボウコレクションからどれくらいのものを持ってきてもらうかなど打ち合わせをいたしました。また、日本食の食通でも有名な彼らですので、どんな食事をするかなどの談義でも盛り上がりました。翌日には昼食をご一緒しました。
○ Alessandro Voltini 今年、ヴァイオリンが入荷したところで、現在、ON SALE です。次回は2025年中の入荷を予定しています。
○ Vladimiro Cubanzi 工房製の3/4ヴァイオリンと、工房のブランド弓などを今回持ち帰りました。家族ぐるみで親しくさせていただいており、毎回お子さんの成長には驚かされます。彼のヴァイオリンも現在ON SALE です。
[クレモナ2日目]
○ Andrea Ferrari Mantovaの若手製作家。今年のANLAIコンクールヴァイオリン部門で入賞。この日が初めての面会でした。事前にコンタクトがあり、送られてきた画像のヴァイオリンが、Francesco BissolottiのCamilio Camilliモデルと近い印象をもつ楽器だったので、一度見てみたいと思い、宿泊していたアパートメントに来ていただきました。やはり、型はBissolotti のモデルの写しだということで、質感も申し分なく、この楽器をいただくことにしました。近日入荷となります。現在、クレモナ派が大きくなってしまっていますが、Mantova やFirenze 派の楽器も一味違った良さを感じます。
○ Manuele Civa & Guadalupe Chavero お二人の間に第一子が誕生しました。奥さんも徐々に製作に戻り始めているとのこと。次回作が楽しみです。現在、彼らのヴァイオリンはON SALEです。
○ Simeone & Giulio Morassi
○ Fabio Dalla Costa
○ Hiromichi Kibayashi
Morassiの工房へ。ここでDalla Costa さん、木林さんともお会いしました。
Morassi親子のヴァイオリンは来年1月入荷予定です。Dalla Costa さんにはヴァイオリンをオーダー、こちらも来年1月頃の予定となります。木林さんは今回のクレモナモンドムジカへの展示出品が間に合わなかったようで、作りかけのヴァイオリンを見せていただきました。次作が出来次第また見せていただくことにしました。Morassiさんとは今後のコラボレーションについても話をしました。
○ Cremona Mondomusica (初日) へ 世界的にも大きな楽器展示会/見本市。多くの製作家やディーラー、ケースメーカーやフィッティングメーカーなどが一堂に会する機会です。今回は、こちらに出店している製作家さんには会場のみでお会いすることにしました。訪問したのはNicola Lazzari, Migiwa Ito Lazzari, Danilo Fiorentini, Lorenzo Lo Prinzi, Davide Somenzi, Giulio Maisenti, Gianni Morassi, Alessandro Fendillo, Yoko Yachi, Federico Fiora, Bruno Fulcini, Claudio Testoni など。Davide Somenziさんへヴァイオリンをオーダー(2024年)、Giulio Maisenti さんは間もなく入荷、谷内陽子さんへオーダー中のチェロの確認、Federico Fiora さんにはヴァイオリンの製作進捗確認などの具体的な内容のほか、会場では多くの楽器を見せていただきました。特にA.L.I. とConsolzio という二つの大きなグループのブースではまだ知らない作家たちの作品も見ることができ、よい勉強になりました。
○ Alessandro Menta
○ Hideaki Kotera お二人の工房を訪問後、一緒に夕食へ出かけました。
Mentaさんは、今製作中のヴァイオリンが完了後、ヴィルトゥオーゾへのヴァイオリンの製作にかかるとのこと。材料はすでに選択済みです。小寺さんは入れ違いでヴィオラを発送していただいており、近日入荷です。また次回製作していただくヴァイオリンの材料選びをいたしました。
[クレモナ3日目]
○ Martin Gabbani 近年評価が特に高くなっている製作家。洗練された彼のヴァイオリンをオーダーしました。来年1月入荷予定。材料も選びましたが、今回は虎杢の目の大きいものにしてみました。それにしても彼は楽器も端正で寸分の狂いもないほどの精巧さを感じますが、工房の道具収納の整然さには驚きました。
○ Marcello Ive
○ Dante Fulvio Lazzari
○ Dario Occhipinti 元祖精巧な楽器を製作する三人衆の工房へ。何年も待っているIveさんのヴァイオリンは目処が立ちませんが、Lazzariさんのヴァイオリンが、ちょうど製作中となっていました。来年1月の入荷予定。Occhipintiさんのヴァイオリンも遠からず製作段階に入っていくとのこと。
○ Cremona Mondomusica(2日目) へ 前日に続きモンドムジカへ。この日はパートナーシップ関係のHiroaki Sakamoto(阪本博明)さんの次男さん(クレモナの製作学校在籍中)が学校の副校長であるAngelo Sperzagaさんのブースでカルテット演奏でヴァイオリンを弾かれるとのことで聴かせていただいたほか、Vincenzo Bissolotti さんへのヴァイオリンオーダーや、Andrea Varazzani、FirenzeのVettori ファミリーを訪れました。Vettoriさんとは、次の機会にはFirenzeの工房へ伺うという固い約束をいたしました。その他 Kazune Nemoto(根本和音)、Rainer Leonhardt やドイツの弓メーカーの製作弓を重点的に見させていただきました。根本さんのヴァイオリンも1月入荷予定。これでは1月に大量入荷になりそうで、ちょっと支払いが心配ですね。
○ ALINEA QUARTET Stefano Coniaさんの工房庭園で開かれた、彼の楽器を使用したカルテットコンサートへ招待いただき聴いてまいりました。
この後、阪本さんとフィレンツェTボーンステーキを食べに郊外へ。骨付きとはいえ、この肉1.4kgです。
[クレモナ4日目]
最終日は、朝からイタリアの鉄道システムダウンで切符が買えない状態に。列車が動いているのかも不安でしたが、切符は中で買うよう言われ、ほぼ予定通りミラノへ戻りました。この日はミラノからミュンヘンへ。空港近くの田舎町に宿泊し、翌日日本へ向かいました。今回、仕事はクレモナのみという慌ただしい日程でしたが、有意義に過ごすことができました。列車に乗る前に阪本博明さんの工房では工房の写真を撮影させていただきました。長男さんはミラノの製作学校でこれから4年間学ぶのだそうです。阪本さんのヴァイオリンは現在ヴィルトゥオーゾで取り扱い中です。
今回は多くの製作家の方々の写真を撮らせていただきました。これまで撮ったものも使用しながら、現在、製作者紹介のページを持つ新しいWEBサイトを作成中です。ご期待ください。
すでに秋の展示会が始まろうとしております。12月にはクレモナ製作協会コンソルツィオのツアー展示会/名古屋展示会も開催する予定です。準備は万端ですね。
店舗・オフィス紹介